フレームワークの勉強をしたけど、本に書いてあることを実行できない、そんな悩みを抱えている方は多いです。
有名なフレームワークは先人の何十年にも渡る知恵と経験の結晶です。過去の偉人からの学びを活かせない人は、ビジネスにおいて大きなハンディキャップを持つことになります。
私は適応障害という地獄の日々から、「営業力」だけで独立し、これまで家族を私の稼ぎだけで養ってきました。しかし、最初から営業力があったわけではなく、心理学、マーケティング、行動経済学など、様々な角度で営業を学び、取り組んできたからこその今があります。
この記事を読めば、超基本的なフレームワークである3C分析を営業に応用し、売上を上げるための方法が分かります。また、机上の論理を実践に活かすためのコツが、この事例から理解できるようになります。
毎日勉強をして、知識はつけているのに結果に結びつかない、そんな人は是非この記事を最後まで読んで、努力を結果に結びつけるためのコツを習得してください。
現場で使いこなしてこそのフレームワークです。基本的なものから使いこなしていきましょう。
3C分析は営業に限らず、あらゆる場面で活躍するフレームワーク
3C分析とはどのような分析方法か
3C分析とは、主に経営戦略やマーケティング戦略で使われることの多い、ビジネスの環境を分析するためのフレームワークです。
ビジネスを取り巻く環境を、「Customer(市場・顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの視点で分析を行います。詳しくは後述しますが、以下のような視点で環境分析をするとイメージしてもらえればと思います。
- Customer(市場・顧客)
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自社が参入している(しようとしてる)商品やサービスがどのような市場にあり、その市場のお客様はどのようなニーズを持っているのか。
- Competitor(競合)
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自社が参入している(しようとしてる)商品やサービスには、どのような競合他社や競合他社が提供している商品やサービスがあるのか。
- Company(自社)
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自社の保有する資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間)やこれまで築いた強みはどのように活かせるのか。
3C分析を行う目的
3C分析を行うことで正しく現状を認識することができます。
3C分析はフレームワークと説明しましたが、3C分析を利用すれば、ビジネスを取り巻く環境や要素をMECE(もれなくダブりなく)に把握することができます。
たったそれだけのことと思っている人がいるかも知れませんが、MECEに分析をするのは非常に難しいです。
- たくさん情報を集めたつもりが競合の情報しか集まっていなかった
- 集めやすい自社の情報ばかりが集まっていた
ビジネスをしていると、このようなことはよく起こります。本人に悪気はなくとも、無意識に情報は偏ってしまうのです。
だからこそ、情報の偏りをなくし、ビジネスを取り巻く環境を正しく理解するために、3C分析を活用する必要があります。
3C分析のような方針がないと、どうしても視野が狭くなりがちです。強制的に視野を広げるためにもおすすめの分析方法です。
3C分析のメリット
3C分析を行うことで、情報の偏りがなくなり、正しいターゲットに、適切な商品やサービスを届けることができます。
先ほど3C分析を行わない場合に起こりうることを記載したので、そちらを例にして説明します。
- たくさん情報を集めたつもりが競合の情報しか集まっていなかった
-
競合の情報を元に、まだどの会社も出していない商品やサービスを開発し、市場で優位に立つことを目指したとします。集めた情報で差別化は可能ですが、その差別化した商品やサービスに、ニーズがあるのかが不明なままで動くことになります。競合と違ったものを世に出したとしても、それが求められていない場合、全く意味はありません。
- 集めやすい自社の情報ばかりが集まっていた
-
自社の強みを活かした商品開発、これはよく聞く言葉です。しかしながら、自社の情報しか集めていないと、強みだと思っていたことが、他社の方が優れていた、ということが起こり得ます。または強みだと思っていたことが、市場のニーズに合わず、弱みになる、ということもあり得るのです。
このような事象を避けることができる、というのが3C分析のメリットになります。
正しい市場・顧客に、適切な商品やサービスを届ける、このビジネスの基本を押さえることができる、というのが大きな成果を生む基礎になるのです。
メリットを享受するためには、定期的に3C分析を続ける必要があります。「市場・顧客」「競合」「自社」の状況は日々変化します。定期的に見直すことで、自社の戦略が間違っていないかチェックすることができます。
3C分析の基本的なやり方
3C分析には、ミクロの視点とマクロの視点を含んだ情報収集が非常に重要になります。
ここではどのような情報を集めれば、効果的な分析になるのかを1項目ずつ見ていくようにします。
Customer:市場/顧客の分析
市場/顧客の分析では、「市場の成長性・将来性」「顧客のニーズ」が分かるような情報を集めることが重要になります。
重要なのは、過去・現在・未来というように、どのように変化をしてきたのか、そしてこれからどのように変化していくのかを把握することです。
時間軸を考慮した分析をすることで、結果とその要因まで理解することができます。
具体的な分析項目は以下の通りです。
市場の分析項目
- 業界の市場規模
- 市場の成長性
- 新しい技術による影響度合い
- 政治による規制などの度合い
顧客の分析項目
- 顧客のニーズ(解決したい課題や悩み)
- 顧客のウォンツ(具体的に求めている商品やサービス)
- 購入に至るまでのプロセスや時間軸
重要なので何度もお伝えしますが、現在だけでなく、これまでの経緯や今後のトレンドについても必ず分析対象としてください。
時代変化によって顧客のニーズやウォンツは大きく変わっていきます。今後もある程度続くニーズやウォンツに対して解決策を提示していかないと、長期的な利益は見込めません。
Competitor:競合の分析
競合の分析では、商品やサービスの特徴や強みだけでなく、その会社自体の特徴や強みの情報も集めることが重要になります。
会社の特徴についても知っておくことで、商品の市場シェアが高い場合などに、それは商品の強さなのか、会社の強さなのかを分けて考えることができます。
具体的な分析項目は以下の通りです。
- 商品やサービスのシェア
- 4P分析
- 商品
- 価格
- 販売ルート
- 販促方法
- 顧客サービス・サポート内容
- 収益性や生産性
- 今後力を入れていく事業
- 業界のポジションや役割
- 業界に与える影響力
競合の項目でも、これまでの流れを確認しておくようにしてください。
例えば、商品の価格について、今の価格だけではその企業の戦略は見えづらいです。
一方で過去の経緯から確認すれば、価格を上げて高付加価値の戦略にしているのか、価格を下げた低コスト戦略にしているのかが読み取れるようになります。
敵は常に動いています。現在だけでなく、未来の動きに合わせた戦略が勝敗を分ける鍵になります。
Company:自社の分析
自社の分析では、競合の分析と同じ項目で行うことが重要です。
自社と競合で情報を集める難易度が変わることは理解していますが、分析する項目はできる限り揃える必要があります。
なぜなら、競合と自社を比べる必要があるにも関わらず、項目に差異があれば正しく比べることができないためです。
競合の情報が集まっていれば、自社の情報は比較的容易に集まるはずですので、ここは競合に合わせにいくイメージの方がやりやすいと思います。
自社の情報も色眼鏡なしに、競合情報と同じレベル感で判断することも大切です。
営業が3C分析を行う時のコツ
営業はここまでの話に加えて、自分が見た、聞いた情報を元に、さらに分析の精度やリアリティを上げることができます。
この営業ならではの視点の有無が、あなたの営業成果を大きく左右します。
会社で数字だけを見ているだけでは分からない「生」の声を活かす方法をご説明します。
市場・顧客の情報は、自分で聞いた定性情報も取り入れる
営業は営業活動の中で蓄積した膨大な定性情報を市場・顧客分析に活かすことができます。
数字でわかる成長率や、世の中で公開されている市場動向やアンケート結果などから市場や顧客の分析をするのが通常です。さらに営業はそれに加えてお客様から直接ヒアリングした、膨大なデータを合わせることが可能です。
定量的な情報と定性的な情報を合わせて使うことで、データの意味づけを正しく行うことができるようになります。
例)市場が急拡大をしている場合
データだけ見れば、その市場に参入することは正しい戦略となります。ただし、市場の伸びとは裏腹に、お客様の不満が多い場合はどうでしょうか?その市場の伸びは一時的で、すぐに代替品の市場へシフトする可能性が見えてきます。その場合は今伸びている市場ではなく、次に伸びる可能性のある市場へシフトをした方が効果的になります。
ただしここで一点注意があります。
極めて少数派の特殊なニーズを、大多数のニーズと誤った判断をしないようにしてください。
営業をしていると、稀にすごく少数派な意見が続けて現れる時があります。そういった情報を100にして考えてしまうと、実際の市場・顧客とはかけ離れた分析になってしまうことがあります。
定性情報だけでなく、定量情報も使うことでこのミスは防げます。
営業の強みは定性情報を使えることではなく、定性・定量の情報を合わせて使うことができること、と認識をしてください。
自社にとって都合の良い情報も悪い情報もフラットに判断することが大切です。
競合、自社を客観的に見た情報を仕入れる
営業はヒアリングする中で、お客様から見た競合や自社を知ることができます。
この第三者目線で競合と自社を比べる、という点が非常に重要です。
自分たちで分析をすると、どうしても自社をひいき目にみるか、自社の過小評価するかのどちらかが起こります。
正しく競合と比べ、優れている部分と、劣っている部分を認識することが、戦略を決める上で非常に重要になります。
中にはアンケートでお客様の意見を求めている企業もあると思います。しかしアンケートは比較的協力的なお客様(=好意的なお客様)の意見が多くなる傾向にあります。
一方で営業は自社に興味がないお客様や、競合の商品・サービスを使っているお客様にもアプローチをするため、よりフラットに様々な意見を知ることができます。
こういった営業だからこそ得られる情報を積極的に使うことが、あなたが他者より一歩抜き出るために必要な行動になります。
営業が持っている情報で最も価値があるものは「不買理由」です。自社の欠点を認識するために必ず聞くようにしましょう。
営業が3C分析を利用して売上を上げる方法
3C分析を利用すれば、あなたの営業トークを何倍も効果的にすることができます。
ここまで3C分析の基本として、経営戦略やマーケティング戦略に活かすという話をしてきましたが、営業として重要なのはここから説明する点なので、是非集中して読んでください。
バリュープロポジションを明確化する
3C分析を利用すれば、営業がお客様に説明すべき、自社のアピールポイントを明確にすることができます。
営業マンであれば以下のような悩みを持ったことがある人も多いと思います。
- 他社商品やサービスとの違いを説明できない
- 自社のアピールポイントを説明してもうまく刺さらない
これはバリュープロポジションを明確にできていないからこそ起こります。
バリュープロポジションとは、他社は満たすことができないが、自社では満たすことができる、市場・顧客のニーズのことを指します。
「自社の強み=他社との違い」と考える人がいますが、その「違い」が市場や顧客に求められていなければ意味がありません。
自社だけが満たすことのできる、あるいは自社の方が他社より満足度を上げられるニーズこそ、差別化ポイントであり、刺さるアピールポイントなのです。
このバリュープロポジションを見つけるために必要な、「市場・顧客」「競合」「自社」の情報を効率よく集める方法こそが3C分析なのです。
営業は3C分析を利用して、バリュープロポジションを明確にすることで、日々の営業トークの悩みがなくなります。
バリュープロポジションを出せるターゲットにアプローチする
バリュープロポジションを見つけたあとは、適したターゲットにアプローチする必要があります。
「市場・顧客」が求めているものがバリュープロポジションなのだから、細かくターゲティングしなくてもいいのでは?
こんな疑問を持つ人がいると思いますが、それは間違っています。
確かにマクロの視点として、「市場・顧客」が求めているものがバリュープロポジションになります。
一方でミクロの視点で考えれば「市場・顧客」には様々なニーズが混在しています。大きなトレンドとしてはニーズのある内容でも、お客様によっては刺さらない場合もあり得ます。
この点は実際に足を動かし、定性情報も含んだ分析をしている営業の強みを活かすことができます。
定量情報と定性情報を利用して市場を細分化し、バリュープロポジションに当てはまるお客様へのアプローチをすることが、受注確度を高める上で非常に重要になります。
3C分析から、バリュープロポジションを出し、さらにそこに当てはまる顧客へアプローチをする。
これが営業が3C分析を強力な武器として使いこなすために意識すべきことです。
正しいお客様へ適したアプローチができれば、基本的には商品やサービスは売れます。この基本を大切にしてください。
まとめ
3C分析を上手く活用することで、あなたのセールストークの質は飛躍的に向上します。
誰でも知っている基本的なフレームワークですが、使いこなしている人は少ないです。特に経営層ではない現場レベルの人材で使いこなせている人は稀だと思います。
だからこそ、あなたが使いこなすことに意味があります。
最初は難しいかも知れませんが是非チャレンジしてみてください。
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