- お客様に新しい示唆を与えられるような、価値のある情報を提供すべき
- 商品営業ではなく、提案型営業やソリューション営業が大切
このように、従来の足で稼ぐ営業、気合と根性で額に汗をかく営業から、頭を使い、考え抜き、脳に汗を書く営業にトレンドが変わっています。一方で実際に営業で働いている人は、まだこのトレンドについて行けていない人も非常に多く、悩みながら日々行動しているようです。
私は現在、営業として独立し、まさに脳に汗をかきながらお客様に提案する日々を過ごしています。また、それ以前は会社員として営業を経験し、その後は外資系コンサルティングファームでコンサルタントとしても働きました。
そこでこの記事では、思考の代表的なスキルである、仮説思考の重要性と鍛え方を営業目線で解説します。これは私が営業、そしてコンサルで学び、独立するまでに昇華した方法です。
今まで思考方法が分からず悩んでいた人、あるいはまだ思考することの重要性が腹落ちしていない人には、非常に役立つ記事となっています。
是非この記事を読んで、「考える営業」を身につけ、あなたのキャリアをより良いものにしてください。
営業=脳筋なんて考え方は古いです。思考する営業を身につけて、時代にあった営業マンになってください。
営業マンにも大切な仮説思考とは
仮説思考とは、ビジネスに関わる全ての人にとって必須で身につけるべき思考法です。
仮説思考というと、外資系コンサルティングファームで働くコンサルタントが重要視している考え方だと思う方が多いです。私が働いていた経験上、確かにコンサルタントほど仮説思考を全員が使っていた職場はなかったです。
しかしそれがイコール、「コンサルタントにしか使えない能力」ではありません。仮説思考は努力すれば誰でも身につけることができ、かつどんな職業であっても非常に高い効果を発揮するスキルです。
一般的な仮説思考とは
一般的に仮説思考は以下のように定義されています。
仮説思考とは、限られた情報の中から、目標の達成・問題解決に向けた仮の結論(仮説)を持ち、その仮説に基づいて情報収集をし、仮説の実行、検証、修正を行っていく思考法。
グロービスMBAより
要するに、仮説思考は、与えられた情報から、最も正解に近いと思われる回答を導き出し、仮説検証を経て正解に近づけていく思考法です。
営業で利用する仮説思考とは
営業活動のあらゆる場面で仮説思考は使えますが、特に私が有効だと思う場面は、以下2つのシチュエーションです。
- お客様が解決すべき課題を特定する(問題の真因の特定をする)
- 特定した課題の解決方法を特定する
この中でも特に課題の特定については非常に重要な役割を持っています。
なぜなら、お客様が考えている課題は必ずしも発生している問題の真因ではないため、営業マンが正しく課題設定をする必要があるためです。
お客様は業務のプロではあるものの、課題解決のプロではありません。よって正しく課題設定ができないことが多々あります。そして、最初の課題設定が間違っていると、いくら良いソリューションを提供しても、問題が解決することはありません。
業務のプロだからこそ、見落とす部分や盲点となる部分が存在します。そんな見えない部分に真因は隠されているのです。
よって仮説思考を用いて、営業マンが正しく課題設定をする必要があるのです。そして課題設定さえ上手くできれば、あとは課題解決に適したソリューションを提供すれば、問題は解決し、お客様からも高い評価を得ることができます。
営業に仮説思考が必要となった背景
このように、営業マンに思考する力が求められるようになった背景には、インターネットの普及があります。
インターネット普及まで
営業の仕事は、商品の情報を伝えることがメインでした。より多くの人に自社の商品を知ってもらうことが、営業マンの成績に直結していました。お客様としても、商品の情報を提供してくれる=営業マンの価値でした。これは情報が今のように手軽に得られる時代ではなく、お客様が持っていない情報を営業マンだけが持っていたからこその価値観です。
インターネット普及後
インターネット普及後は、商品情報などは営業マンから聞かなくても、お客様自身で調べることが可能になりました。よって従来の商品情報だけを提供する営業マンに価値は無くなりました。結果として、世の中に普遍的にある情報ではなく、かつお客様自身も知らない(気づいていない)情報の提供が、営業マンとしての価値創出方法になったのです。
この時代の流れが生み出した営業方法が、提案型営業、ソリューション営業のような「思考する営業」なのです。
営業が仮説思考を身につけるメリット
営業が仮説思考力を身につけ、かつ高いレベルまで伸ばすことができれば、営業成績が高いレベルで安定します。
具体的にどのようなメリットがあるのかをここでは説明いたします。
仕事のスピードが圧倒的に上がる
仮説を持って仕事をすると、仕事のスピードが圧倒的に上がります。
これを聞くと、「仮説が当たった場合は早いが、外れた場合は遅くなるはずだ」と考える人がいますが大きな間違いです。例え仮説が外れた場合でも同じで、仮説を持たない場合よりも仕事のスピードは高くなります。
仮説を持たないと言うのは、目的地を持たずに歩き出すようなものです。どれだけがむしゃらに歩いても、正しい答えに偶然辿り着くまでは手探りの状況が続きます。
一方で、仮説を持って進んだ場合、あなたの持っている目的地までの地図が正しくない場合には、その方向は間違っている、と言うことが明確になります。確かに一回で正解を出すよりは時間がかかりますが、仮説検証をすることで、確実に正しい答えに迫っていくことができます。
このように、意味のある行動をとることができるため、仕事のスピードが上がるのです。
仮説検証では、仮説が間違っている、という事実が分かれば、正解まで一気に近づくことができるのです。
営業の質が、お客様に依存しなくなる
言葉は悪くなりますが、お客様にもレベルの高低は存在します。仮説思考が身についていれば、このお客様のレベルに依存することなく、営業を行うことができるようになります。
お客様の中には、元々正しいと思われる課題設定ができている人もいれば、原因特定は一切行わない(行えない)人もいます。
例)
泥棒が入ったと言う問題が発生した場合、以下のようなお客様が考えられます。
Aさん:鍵がかなり古い型のものを使用しており、ピッキングが容易に可能な状況だった。最新式に変えたい。
Bさん:泥棒が入ったので、今後入らないようにしてほしい
Aさんの場合、状況を理解しやすいですが、Bさんの場合、与えられた情報から自分で原因を探す必要があります。
上記の例で言えば、仮説思考を身につけていない場合、Aさんの時は営業が上手くいくが、Bさんの時は上手くいかないとなりやすいです。このようにお客様のレベルに依存しないようにするためにも、仮説思考思考を身につけ、全てのお客様に高いパフォーマンスが出せる必要があります。
お客様と長期的な関係を築ことこができる
優れた仮説を立てられる営業マンは、お客様から相談を受けることが多くなります。
先ほども記載したように、営業マンの価値イコールお客様も気づいていない情報を提示できることにあります。優れた仮説はお客様の気づいていない課題にも辿り着くことができるため、非常に価値の高い情報となります。
営業マンは、「この営業は役に立つ」、そう思わせることが非常に重要で、そのポジションになれば、自然とお客様が集まってきます。そしてもれなく長期的なWin-Winな関係に繋がっていくのです。
営業マンが行うべき仮説思考のやり方
ここからは仮説思考のやり方をご説明します。
4ステップで構成されているのですが、最も重要なのはこのステップを仮説が正しいと証明されるまで、何度もループして行う、ということです。このことを頭においた上で、1ステップずつ解説を確認してください。
仮説検証のステップは一回で終わりではなく、何度も繰り返すことで精度が上がっていきます。
既存の情報から仮説を立てる
まずは現在すでにあなたが持っている情報だけで、粗い仮説を立てます。
よくある間違いが、ある程度情報収集をしてから仮説を立てる、というやり方です。しかし、いきなり情報収集を始めても、答えを出すために必要な情報の広さも深さもわからないため非常に無駄が多いです。
まずは必要な情報や、深く調べる必要がある部分を明確にするために、手元にある情報から当たりをつけておくことが重要です。
追加で必要な情報を収集する
次に、粗い仮説の精度を上げるために、仮説を証明するために必要な情報を収集します。
ここで仮説を証明するための情報、というと、仮説を正しと証明するための情報と勘違いする人が多いですがこれは誤りです。仮説が正しいことを証明するのではなく、その仮説が正しいのか、または間違っているのかを明確にする必要があります。
人は最初に立てた仮説に固執し、意図せず、仮説が正しいと証明するための情報のみにアンテナが反応することがあるため、注意が必要です。
仮説はあくまでもただの仮説のため、間違っている場合は素早く切り替える大胆さも非常に大切な要素です。
仮説を修正する
追加で集めた情報をもとに、お客様へ話ができるレベルに仮説を磨き込みます。
最初に立てた仮説は、あなたが見ている範囲の情報をもとに立てた仮説のため、新しい視点で情報収集をした後に変わることは往々にしてあります。
一方で、あなたが集められる範囲での情報でしかないため、まだ全ての情報が揃っているわけではありません。この時点でも足りな情報を想像力で補って仮説を立てる必要があります。
仮説の修正と同時に、事実と解釈、そしてあなたの予想になる部分を分けて考えることを意識してください。
仮説を検証する
最後は仮説が正しいのかを、お客様に仮説とそこに至る背景を説明することで確認します。
背景を伝える際に大切なのは、事実と解釈、そしてあなたの予想をそれぞれ分けて伝える、ということです。
優秀な仮説であればあるほど、お客様の気づいていない内容になることが多いです。よって、あなたの妄想だと思われてしまうと、一気に信ぴょう性がなくなります。そこで大切なのが、どこが事実で、どこが解釈で、どこがあなたの想像なのかを分けて伝えることです。ここが混ざると、事実ですらあなたの想像だと誤認される可能性があります。
事実と解釈が混ざると、事実をあなたが捻じ曲げている印象を与える可能性もあるため、注意が必要です。
この場では仮説の正しさの議論とともに、あなたの仮説や想像が正しいのかもお客様とすり合わせをしてください。
そして最初にお伝えしたとり、その時点であなたが持っている情報で再度仮説を立て、情報を集め、検証する、というようにここまでの流れを何度も繰り返してください。そうすることで徐々に本当に解決すべき課題が見えてきます。
営業マンが持つべき良い仮説の特徴
仮説には良い仮説と悪い仮説があり、基本的にはここで紹介する3点を満たす仮説であれば、お客様から高い評価を得ることができます。
最初から全てを満たせる人はいないので、この基準を見て諦めるのではなく、一つの指標として使っていただければと思います。
思いつきではなく、深い思考が伴っている
まず一つ目は、思いつきで仮説を設定するのではなく、深い思考を伴った仮説になっていることです。
これは大前提ですが、思いついた内容をそのまま考えもなしに発言することは仮説思考とは呼びません。仮説思考とは、今ある情報から、最も可能性が高いと考えられる結論を導き出すことです。
また、簡単に思いつくことであれば、お客様も思いついています。それが放置されていると言うことは、それが真因ではない、あるいは解決するほどの内容ではない、と言うことです。
仮説にはいわゆる営業の勘も必要ですが、それはきっかけにすぎず、論理的な思考が必要であるとご認識ください。
お客様が気づいていない視点が含まれている
これは理想も含みますが、お客様が想定していない内容、あるいは想定していたが、候補から外していた内容であれば非常にいい仮説と言えます。
とはいえ、お客様に確認する前の状態では満たしているか分からないため、それくらい深く、多面的に考えられた仮説であるかという視点で考えてください。
お客様が想定していないことをお伝えするということは、イコールお客様に新しい気づきを与えることです。これが仮説思考の醍醐味でもあります。
また、それと少し内容は異なりますが、候補から外している内容についても、お客様が外した理由を上回る仮説があれば、非常に大きなインパクトを与えることができます。ただし、世間一般的にはあなたが正しくても、社内特有の状況から候補外にしている可能性もあるため注意が必要です。
お客様特有の事情も多いため、柔軟な思考を心がけてください。
自らが提供できるソリューションと紐づいている
あなたが立てた仮説が、あなた自身で解決できることであれば、成約に大きく近づきます。
しっかりとした深い思考が伴っており、かつお客様も思いついていないような課題や解決策の特定ができたとしても、その内容にリーチするソリューションを持っていなければ売上にはつながりません。
ただし、提供可能なソリューションに繋がらない仮説に意味がないとは言いません。自分の利益にならない結論だとしても、お客様に伝えることであなたの真摯さや、有能さを証明できます。。
よってできれば売上に繋がる内容がいいものの、違ったとしても伝える意味はあります。間違っても自分の利益のために結論をねじ曲げることはしないようにしてください。
【重要】営業マンが仮説思考力を鍛える方法
大前提として、営業マンが仮説思考力を伸ばすためには、経験を多く積むことが必要不可欠です。
ただし、何も考えずに案件をこなす日々は経験とはなり得ません。しっかりと考え抜くことが仮設思考力を伸ばす鍵になります。そのため、どのようにして多くの経験を積んでいくのか、という点をここでは説明します。
【最重要】全ての営業で仮説思考を使う
まずはこれから先、あなたが会うお客様全てに仮説思考を使って営業をしてください。
先ほどもお伝えしたとおり、仮説思考は繰り返し行うことが非常に重要です。
ただし、精度の低い仮説をお客様にぶつけることを嫌がる人もいます。確かに精度の低い仮説はあなたのレベルの低さを相手に証明することになるリスクもあります。(一生懸命さを伝える可能性も大いにありますが。)
私がお伝えしたいのは、仮説を立てた後、お客様にぶつけなくてもいい、と言うことです。
お客様が考える課題を聞き、その内容を深ぼっていくという方法も営業手法の一つです。これであれば仮説をぶつける必要はありません。ただ重要なのは、頭の中の仮説と、最終的に着地した内容を比較して、あなたの仮説の精度を確認する作業を行うということです。
擬似的に検証を繰り返すことで、仮説思考の経験をお客様に迷惑をかけることなく積むことができます。
日常で相談された時、その背景や課題を想像する癖をつける
お客様以外にも、あなたの周りの人の問題を聞いた際に仮説思考を使うことで、経験値を積むことができます。
これも先ほどお伝えしたように、言葉にしなくても大丈夫です。あくまで自分の中で仮説検証を繰り返す、かつそういう癖をつけるというイメージで取り組んでみてください。
具体的には、普段様々な場面で人から相談を受けることが多いと思います。そういった状況の時に、問題の背景や真因は何か、それは外的要因なのか、内的要因なのかなど仮説を立てていきます。
このようにして目の前の事象だけではなく、その先を想像する癖をつけると、お客様と話している時でも、同じように考えることができるようになります。
何か問題が起こった時、なぜを5回繰り返す
上記と似ていますが、あなた自身に何か問題が発生した際にも、なぜを5回繰り返して解決策を考える(深く思考する)練習は可能です。
トヨタ生産方式でも言われている考え方ですが、全ての思考の基本がこの、なぜを5回繰り返す、だと私は考えています。
日常的に使うことで習慣になり、あなたの思考を根本から変えてくれるはずです。
ここまでの内容を見てもらえるとわかるように、考えることを習慣にすることが、経験を重ねる上では非常に重要となります。よって、お客様、周りの人、自分など使えるチャンスはフルに使って習慣化を目指してください。
これだけ何度も挑戦できるチャンスが与えられているのが営業という職業の特権です。メリットを活かして行動していきましょう!
まとめ
最後にここまで読んでいただいた内容を実践していただければ、あなたの営業成績は大きく伸びると思います。
それだけではなく、仮説思考という考え方は、ビジネスにおいてあらゆるシーンであなたの助けになるはずです。
そして少し宣伝にはなってしまいますが、今後あなたが営業として成功して行くことを考えた時、その方法は、転職or独立をするしかないです。ぜひ自分のレベルを上げて、挑戦してみてください。
詳しくは以下記事に記載しているのでご確認ください。
すでに転職を視野に入れて動いている方は以下記事を参考に転職活動を進めていただければと思います。
皆様が営業として成長し続けるルートを歩むことを願っています。
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