- KPIが大切とは聞くけれど、具体的なイメージができない
- 来期のKPI設定を求められているけど、上手く設定できない
- KPIを設定しても、成績に繋げられない
このように、KPIは重要だと理解しつつも、上手く営業成績の向上まで繋げられている人は非常に少ないです。
私は適応障害という地獄の日々から、「営業力」だけで独立し、これまで家族を私の稼ぎだけで養ってきました。しかし、最初から営業力があったわけではなく、心理学、マーケティング、行動経済学など、様々な角度で営業を学び、取り組んできたからこその今があります。
そこでこの記事では、KPIとは何かという基本的な部分から、営業マンがKPIを設定するための具体的な方法と、注意点をお伝えします。
この記事を読むことで、営業マンに必ず付きまとうKPI設定というタスクを効率的に行えるようになり、あなたの営業成績は必ず向上します。
私が勉強し、実務で活かしながら習得したKPI設定の技術をまとめたので、ぜひ最後まで読んで、明日からの営業活動を変えてください。
営業におけるKPIの目的は効率的に目標を達成すること
営業マンの方は、KPIという言葉を日常的に耳にすることが増えていると思います。
ただその一方で、KPIという言葉の意味や目的を正しく理解している人は非常に少ないです。これはKPIを与えられるメンバーレベルに限らず、KPIを設定している人ですら、理解できていないことがあります。
そもそも営業マンがKPIを設定し始めた背景には、マーケティングツールの発展があります。この発展により、数値化することが難しかったお客様の行動データを、誰でも簡単に取得することができるようになりました。
一昔前は気合いと根性と言われていた営業も、今では数字を元にしたロジカルな行動を求められています。
ただ現状はKPIとい言葉だけが一人歩きし、正しく利用されていない状況が多くの組織で起こっています。
まずこの章ではKPIの意味や目的を正しく理解すること目指します。自分は正しく理解していると自信のある方は、この章は読み飛ばしていただいて結構です。
KPIとは
KPIとは「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」という言葉の頭文字をとった言葉です。
重要業績評価指標、、、正直よく分からないですよね。
私がいつも人に教える際は、KPIを以下のように教えています。
KPIは最終的なゴールを達成するまでの間にある行動目標のようなもの。”重要”業績評価指標とあるように、その中間目標を一つずつクリアしていくと、最終的なゴールが達成できるように設計する必要がある。
スタンプラリーみたいなものをイメージしてもらえるとわかりやすいです。(実際には順番にクリアするわけではなく、同時に追う指標もあるため、あくまでイメージです。)
いきなり大きなゴールだけを示されても、日々の行動に落とし込むことができません。この日々の行動に落とし込むための指標がKPIとなります。
KPIとKGIの違い
KGIとは「Key Goal Indicator(重要目標達成指標)」という言葉の頭文字をとった言葉です。
これは簡単にいうと、あなたが達成すべき最終的なゴールとなります。
よってKGIを達成するための中間目標がKPIとなるため、混在されがちな言葉ですがそれぞれが示す指標はレイヤーが異なります。
ただここで一点注意していただきたいのは、KPI達成のために設定するKGIはあくまで「”あなたが”達成すべき最終的なゴール」になります。
例えば、あなたが営業部長であれば、営業部全体で達成すべき目標がKGIとなります。そこからKPIを設定し、各課長に達成すべき目標を指示していきます。
一方で課長は部全体の目標をKGIにはしません。あくまで自分の課に与えられた目標をKGIとします。そこからKPIを設定し、各チームに達成すべき目標を指示していきます。
このように、KPI設定の前提であるKGIは立場や役割によって異なります。
全社的な目標を念頭に置いて計画することは大切ですが、そこからKPIを設定すると、自分の行動とはかけ離れたKPIを設定することになるため、あくまで自分に与えられた数字をKGIとします。
KPIを設定する目的
KPIを設定する目的は、営業目標の達成確率を上げるためです。
この後ご説明しますが、KPIを設定すると様々なメリットを享受できます。
ただあくまでも目的は、営業目標の達成です。ここからお話しする全てのことは、あなたや、あなたの属する組織が目標を達成するために必要なことです。
KPIの設定は手段であり、目的でもゴールでもないので、その点は間違えないようにしてください。
KPIを正しく設定するには大きな労力が必要です。そのため、KPI設定そのものがゴールにすり替わることがあるので注意が必要です。
KPIを設定するメリット
KPIを設定するメリットは以下の3点です。
【行動前】目標達成に向けて、いつまでに、何を、どの程度行えばいいかわかる
KPIは目標達成に向けた行動目標(指標)です。そのため、具体的な日々の活動量を把握することができます。
ゴールだけが示された地図では、自分が今どこにいるのか、期限に間に合うペースなのかがわかりません。
一方で中間地点と目安となる時間が書かれた地図を持っていれば、正しいルート、時間で目標まで辿り着くことができます。
【行動中】状況の確認や報告を短時間で、認識齟齬なく行うことができる
KPIという共通言語があれば認識齟齬なくコミュニケーションが可能です。
マネージャーの立場であれば状況確認を、メンバーの立場であれば状況報告をする必要があります。
この時、定量的な数値を元に報告をすることで、状況を正しく共有でき、その時々で必要な打ち手を素早く実行することができます。
【行動後】振り返りの際に、ボトルネックを見つける手がかりになる
KPIは営業目標達成のために必要と記載しましたが、未達となることももちろんあります。
ただ目標が未達となった時の要因分析もKPIを設定していれば容易に行えます。
数値的に凹んでいる部分は一目瞭然ですし、そこからのより深い洞察が可能になります。
営業にとって適切なKPIの設定方法
営業がKPIを設定する時、どのような手順で考えればいいかを解説します。
手間がかかる作業ではありますが、最初に時間をかければ、あとは迷いなく突き進むことができます。
結果的に目標達成に要する時間は確実に少なくなるので、ぜひチャレンジしてください。
ゴール(KGI)を設定する
KPIの設定にはゴール(KGI)が絶対に必要です。
KPIの定義でもお伝えしたように、KPIは手段であり、目的・ゴールではありません。このゴールの設定が甘いと手段が目的化するという悪循環に陥ります。
ただし、このゴールの設定は難しいことは考えず、上司から与えられた営業目標にしてしまって大丈夫です。
ゴールを一から作り出すレイヤーの人はこの作業に時間をかける必要がありますが、このブログはそんな高レイヤーの方を対象にはしていません。
なのでこれを読んでいる方(課長以下の皆様)は素直に与えられた目標に対して、全力でコミットすることを目指してKPIの設定を始めてください。
ゴールの間違いを指摘することも大切です。ただし、間違いを指摘するためにも、正しい行動による証明が必要になります。
ゴール(KGI)をロジックツリーで分解する
次はゴールを日々の行動レベルに落とし込むために、細かい要素に分解していく作業が必要になります。
ロジカルシンキングの勉強をすると、必ずと言っていいほど勉強するロジックツリーがここでは役に立ちます。
ロジックツリーの詳しい解説はここでは省きますが、簡単に説明すると以下のようなものです。
とはいえ、いきなりこの情報だけで動き出すのは難しいと思うので、よく使われる例を紹介します。参考にしてみてください。
一般的な売上の因数分解
営業マンは売上が目標になることが多いと思います。
この売上を因数分解すると以下のような式が成り立ちます。
売上=購入人数×購入単価×購入回数
さらに購入人数は以下のように細分化することができます。
購入人数=新規顧客+既存顧客−離脱顧客
新規顧客=新規リード数×受注率
このように、細かく分解すればするほど、自分の行動で影響を与えられる数値が見えてきます。
例えば、購入人数だけでは漠然としていますが、新規リード数を増やす、という目標であれば、日々迷いなく行動ができると思います。
このように、売上という一つの事柄を分解していくことで、日々の行動目標位にまで落とし込むことができます。
行動フレームワークを活かした分解
既に存在するフレームワークを利用する、というのも方法の一つです。
フレームワークは過去の優れたビジネスマンが、ロジックツリーのような考え方で導き出した、一つの完成された考え方です。
ここではAIDMAの法則、という顧客の購買行動を表したフレームワークを例とします。AIDMAについて詳しく知りたい方は以下の記事も参考にしてみてください。
先ほど「新規顧客=新規リード数×受注率」と話しましたが、受注率を上げるための方法を具体化するために利用することができます。
例えば、あなたは営業マンとして多くのお客様に興味を持ってもらい、商談の場では欲しいと言ってもらう機会が多いが、その後中々受注に繋がらないと仮定します。
そんな時、このAIDMAの法則に当てはめると、記憶のステップで滞留していると考えることができます。よって今期はお客様への後追いを毎日◯件する、という目標に繋げることができます。
受注率、という一見コントロールが難しい要素も、分解することで多少はコントロールする術が見つかります。
重要な指標かつ営業がコントロール可能な数値をKPIに設定する
次に、ここまで分解してきた要素の中から、目標達成のためにキーとなる指標をピックアップします。
この時重要なことは以下2点です。
- 目標達成に向けた重要な指標であること
- 営業が自分でコントロールすることが可能であること
それぞれ具体例を説明します。
目標達成に向けた重要な指標であること
目標達成に向けて重要な指標であること、というのは当たり前のことのように思いますが、実は忘れられがちです。
例えば、業界が成熟期に入り、新規顧客の獲得が難しくなってきたとします。
そのため、売上目標のために既存顧客の囲い込みを実施する方向で目標が設定された場合、何が重要な指標でしょうか。
「既存顧客への連絡頻度や訪問頻度」
これは目標達成に向けた重要な行動指標になりそうです。
では、「新規アポイントを獲得する、見受注顧客への後追いをする」はどうでしょうか?
必要な行動ではあるものの、目標達成からは少し離れています。
この例のように、そのKPIだけを見ると「合理的」だけれども、KGIとの関係を見ると「非合理的」なKPIを設定してしまうことが多々起こります。
ゴールとの一貫性のあるKPIになっているかは常々意識して見るようにしてください。
戦略策定と同じで、数字に関しても、ストーリーに一貫性を持たせることが非常に重要です。
営業が自分でコントロールすることが可能であること
KPIは行動目標であるため、自分でコントロールできる内容であることが望ましいです。
売上を上げるために、客単価を上げることはできますが、営業の力で商品単価を上げることはできません。
これまで値引することが多かった営業が、値引をしないことで擬似的にコントロールはできるかもしれませんが、基本的に商品単価は営業の一存で決められるものではないためです。
自分でコントロールできないKPIはモチベーションを下げる結果にしかならないため、避けるようにしましょう。
大きくこの2点を外さなければ、目標達成に向けたKPIとしては合格点が取れると思います。ここまでの内容で、現状のKPI設定の間違いに気づけた方はすぐにでも修正を始めてください。
仮説を元に、具体的な数値を設定する
最後に設定した数値を元に、具体的な数値を設定します。
ここで意識するべきことは、以下2点です。
- 設定した数値を全て達成すれば、ゴールの達成ができること
- それぞれの数値が、「簡単ではないけれど、頑張れば手が届く」範囲で設定されていること
一つ目は、そもそもKPIを設定する目的として、ゴールの達成があります。よってそこを満たせない数値では意味がありません。
次に「簡単ではないけれど、頑張れば手が届く」範囲とは、人のモチベーションに関わる話です。
人は簡単すぎる目標でも、難しすぎる目標でもモチベーションが下がります。少し背伸びをすれば届く程度、このような数値を設定できれば、あなたは高いモチベーションを維持したままゴールに向かって進むことができます。
営業がKPIの設定をする上での注意点
ここまでの説明を守っていただければ、基本的に大きく外すようなKPIにはならないです。
ただ追加で以下の点も意識すると、より達成率の上がるKPIを設定することができるようになるので、是非意識してみてください。
あくまでここまでの内容をある程度実践できている前提での注意点です。
この注意点だけを気をつければ達成できるわけではないので、その点はご認識ください。
数を多くしすぎない
細かいKPIにすればそれがいいのかと言うと、あまりに数が多いと逆に行動が遅くなるジレンマがあります。
KPIは細分化すればするほど細かくなりますし、数も増えていきます。
極端な例ですが、アポイント獲得件数を上げるための行動を細分化していくと以下のようになります。
・架電件数を上げる
・架電件数を上げるには、これまで1時間に2件の架電だったので、1時間に3件架電することにする
・1時間に3件架電するためには、情報収集◯分、電話番号の入力◯秒、お客様との会話◯分、情報入力◯分で対応する
このように細かく分けて、○としている部分を全てKPIとして設定した場合、あなたは全ての項目を把握しながら行動できるでしょうか?
この内容以外にも様々なKPIが課される中で、ここまで細かい数値を全て追うのは難しいと思います。
よって、KPIは各ゴール毎に3つ〜5つ程度に絞り込むことをお勧めします。
その上で、各KPIを追う中でうまくいかないタイミングなどで、より細分化して原因分析に行う方が、行動のスピードと、分析の精度が高まります。
他社の事例をそのまま自社に適用しない
KPIに設定すべき項目は、業界や会社規模、これまでの成績など、様々な要因を考慮して決める必要があります。
よって会社が異なれば、設定すべき内容は大きく変わる可能性が高いです。
全く同じゴールを設定しても、スタートの位置、それぞれの能力が異なれば、進むべきルートも異なるのです。
ただKPIの設定や考え方については、多くの書籍で書かれていることもあり、他社事例をそのまま取り入れようとする人がいます。
この考え方では効果的なKPIを設定することはできません。KPIは私が説明した方法で、しっかりと考えながら設定をすることに意味があります。
ちなみに、本を読む意味がないと言っているわけではありません。本を読む際には、「どのような思考でそのKPIに至ったのか」に注目してみると、あなたの実務に有益な情報が得られます。
KPIを活かして営業目標を達成するためには、日々の意識と振り返りが重要
KPIは設定することが目的ではなく、目標を達成することが目的です。
よって正しいKPIを設定した後は、目標達成に向けて行動する必要があります。
日々KPIを意識した行動をとる
KPIは行動目標のため、日々その目標を達成するために行動をする必要があります。
KPIを設定したにも関わらず、何も意識せずに過ごしたのでは意味がありません。
具体的にKPIを意識した行動をとることで得られるメリットは以下の通りです。
- 毎日の行動量が明確になる
- うまくいかない時に改善すべき項目がわかる
このように日々の行動に明確な意味を持たせ、振り返りをし易くすることができます。
最初は数字に追われている感覚となり、窮屈に感じるかもしれません。
ただ一度慣れると、具体的な数字を目指して走ることの楽さを実感し、KPIの有用性を認識できるはずです。
ゴールの分かっている持久走と、ゴールの分かっていない持久走では、ゴールが分かっている方が楽なのと同じです。
振り返りの場を設定する
KPIを設定した後の振り返りでは、大きく2つの振り返りを実施してください。
- 設定したKPIは適切だったのか
- 未達成のKPIは何が原因で達成できなかったのか
これは順番もこの通りで実施することをお勧めします。
なぜなら、KPIの設定自体にミスがあった場合、そのKPIの未達原因を考えても、あまりいい回答が出てこないためです。
まずはしっかりとKPIの設定内容を見直し、その上で未達要因の深掘りを実施してください。
また未達要因の深掘りについて、以下ポイントを大切にすると、一気に効果が上がるので覚えておいてください。
複数のKPIで未達があった場合、それらの原因は1つであることが多いです。
それぞれのKPIの未達要因を表面的に見るのではなく、しっかりと深掘りをして、真因を特定してください。
まとめ
ここまで説明した内容を実践してもらえれば、必ず効果的なKPIの設定が可能です。
効果的なKPIの設定が可能になれば、あなたが目標を達成できる可能性は大きく高まります。
あなたが営業マンとして大きく成長できることを願っています。
そしてある程度成長ができた際には以下の記事を参考に、次のステップを考えることをお勧めします。不明点あればお気軽にお問い合わせください。
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